ポジティブ・ディシプリンの考え方は3つの柱から構成されています。それは
1)子どもの健やかな発達の研究
2)効果的な育児の研究
3)子どもの権利
です。
1)2)の研究の中でも、発達心理学でとても有名なアタッチメント理論(ボウルビー)はポジティブ・ディシプリンの考えを支える重要な一つです。私たちが子どもに良い影響を与えるヒントになるように、この理論にちょっと触れてみたいと思います。
アタッチメントとは、
子どもが不安や危険を感じた時、
特定の誰かに体もしくは心でくっつく(アタッチ)ことで安全感を確保すること
と言えます。
例えば、抱っこしていた赤ちゃんを床に下ろしたらば、
赤ちゃんがハイハイで進み出す。
けれどある程度離れたところで何らかの不安を感じて、
親の方を振り返る。
でもそこに変わらず親がいると、安心してまた進み出す。
これは、親の寄り添いを心で感じ(くっつく=アタッチ)安心感をもつアタッチメント行動と言います。
アタッチメントを、ポジティブ・ディシプリンでは「子どもの安全基地」と言い換えたりします。
ハイハイの赤ちゃんも、もし何かにぶつかって痛み(危機)を感じたら、
その危険な場所からすぐ親のところに戻り、
泣き止む(安全感を取り戻す)まで抱っこしてもらうのですから、
まさに「安全基地」ですね。
養育者とのアタッチメント
(ネガティブな感情を感じた時、くっつくことで安全感を得られるだろう安全基地)が、
子どものパーソナリティ、発達・親子関係・友人関係・恋愛関係などに
大きな影響を与えるというのがアタッチメント理論です。
安定したアタッチメント(安全基地)があれば、
世界に対して基本的な信頼が持て
自分に自信を持つことができ
周囲に好奇心を持って関わっていくこと
ができ発達が促進されることになります。
世界に対する基本的な信頼、ってどんなものかというと
〜赤ちゃんがお母さんのお腹の中とは全く違う世界に生まれてきて
大きな音、寒さ、暑さ、空腹、眩しさ、排便に伴う不快などなど
様々なものにただならぬ感覚を持ちます。
でもそんな時、
自分の最大のスキル「泣く」ことで人に助けてもらう
いつも「泣く」と誰かがお世話をしてくれ快適になる
この経験を繰り返すと、どうでしょう😄
「世界はどうやら大丈夫そうだ。何か危機があっても、また安心が戻ってくる」
という感覚が生まれてきそうですね。
それこそが「他者は自分を助けてくれる、信頼できる」という基本的な信頼が持てること。
次に、自分に自信を持つことができる、というのはどういうことか、
書籍から引用してみます。
(『"育つ"こと”育てる”ことー子どもの心に寄り添って』著者:田中晢氏)
子どもは(略)自分にはこういう良いところがあるなどと自分の価値を認識したり、創り出したりすることなどできません。それでは、自分には価値があると、どこで感じることができるのでしょうか。
おそらく、多くの子どもたちにとって、母親は一番大切な存在でしょう。この一番大切な人にとっての"大事なもの"が鍵になります。(略)
母親のまねをしたり、言葉ちょっと発したりすると、自分の大事な母親が喜んでくれる。(略) そして、子どもはそのような中で、「お母さんは間違いなく、自分のことを大事にしている。(略)だから、自分は価値ある存在なのだ」と実感するようになるのです。
このように、「自分が価値ある存在だ」という自己モデルと
「他者は自分を助けてくれ、信頼できる」という他者モデルが
養育者とのアタッチメントの積み重ねから育まれ
そのモデルが、子どもの発達へまた人間関係の形成の際に影響を与えると言います。
毎日毎日、赤ちゃんの「泣き」をなんとかしてあげようと、
オムツかなー、おっぱいかなーと奮闘している時間
それが、小さな赤ちゃんの大きな未来へと繋がっていること
毎日毎日、赤ちゃんが泣くたびに、何かしてあげること
それが、赤ちゃんが20歳になった時、自信があり、他者と信頼関係を結べる人へなる大きな一歩だと知ること
アタッチメント理論から、様々な可能性が見えてきます。