このブログの題名で使ったシンポジウムのサブタイトル
「『長くつ下のピッピ』の作者とスウェーデンの子ども観に学ぶ」は
次回以降のブログでご紹介します。
今回は
スウェーデン大使館のシンポジウムという、日本の家庭には関係なさそうなものと
私たちの日常の子育ての繋がりを見て行きたいと思います。
私たちはファシリテーターであり、役割は、養育者の方が自ら考えたり、自分で決定するよう
知恵となり得る情報を、国境や専門領域を越えて、普通にある日常の子育て家庭にお繋ぎすることです。このブログでも、養育者の方の日常の子育てに何か役立てばと願い、情報をお繋ぎしたいと思います。
シンポジウムには、
ポジティブ・ディシプリンのファシリテーターが4人参加してきました!パネラーでご登壇された高祖さんも加えると5人です。
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養育者は、子どもによく育って欲しいと願い、その大きな責任からしつけをします。
子どもが理解するように、悪いことは罰し、良いことは褒める方法をしてきました。
しかし、研究者による調査・研究により、子どもに使う罰・暴力は子どもの健全な発達を逆に妨げることがわかってきました。発見は発表されますから、学問領域・医療領域さらには政治の世界にも広がり、ついに法律で家庭も含めた子どもへのあらゆる暴力を禁止する国が現れたのです。その国が今回お邪魔した大使館の国、スウェーデン🇸🇪です。
そして発見を世界に共有し、世界の政治に影響を持つのが、今回の基調講演のスピーカー、マルタさんが所属する国連です。
国連事務総長特別代表マルタ氏は、この体罰禁止の法律を
「最良の家庭を築くための法整備をした、それは家庭で暴力を禁止する法定化です」
と紹介しました。
ポジティブ・ディシプリンの考え方から、マルタさんの言葉の説明をすると
体罰を禁止すると言うことは、「子どもが悪いことをしても親は何もせず、良いことを褒めるだけにする」とイコールではありません。
「悪いこと」はやめ良い方法を教え、理由を説明したり、年齢に応じて子どもに考える機会を与えたり、一緒に考えることです。
ちょっと質問です😄
私たちの多くは、いい人と思われたいし、いい人間でありたいと思っていないでしょうか。
ある場面で自分がやったことが、周囲からは不評だった時、
私たちは罰されることは望まず、話してくれれば分かるのに、とか次回はうまくやるぞ!と思いませんか。
子どもも同じで、いい子だと言われ愛されたいし、いいことをしたいと思っています。大人がして欲しくないことを子どもがした時、罰したり制裁をする必要はないのです。私たち大人が忘れるくらい重ねた経験の1回を今子どもがしていて、その経験から子どもが学べるように、大人の知性の灯りで照らして見せてあげればいいのです。
子どもがいい子であろうとはせず、癇癪を起こして悪い子のように振る舞うときは、
パニック状態に近いので、子どもが落ち着くように(親自身が落ち着いて話しかけたりし)安心安全を確保し、子どもが考えられるようになったら、子どもが学べるように一緒に話すようにしてみます。
しつけから暴力をなくしたら、
罰する代わりに、養育者は自分のストレスにうまく対処する方法を知り、
これまでよりも辛抱強く子どもに教える必要が出てきます。
でも、実はそれは親子関係を強める方法であり、
衝突やストレスフルな場面での対応のお手本となるのです。
マルタさんがおっしゃった、体罰禁止法は「最良の家族を築くため」のものということに繋がります。
スウェーデンでも、親子法で家庭での体罰を明示的に禁止することは、大議論でしたが、世界初の法定化チャレンジに他の国も注目し、法定化の影響についても各国で研究され、今や53カ国が追随して体罰を法律で禁止しています。
そして、これだけ多くの国が子どもへの暴力を禁止し、禁止による社会への悪影響がないこと、加えて子どもの虐待死が減ったことが明らかになると、体罰禁止は世界の常識となり、日本も遅ればせながら動き出します。今年の2月、スウェーデンで開かれた子どもへの暴力撲滅「ソリューションズ・サミット」に多くの政府、市民団体、国連、民間セクター、子どもとともに日本も参加し、子どもへの暴力撲滅の「パスファインダー国(模範国)」になりました。
実際昨年、厚生労働相は「体罰によらない育児を推進するための啓発資材(愛の鞭ゼロ作戦)」を提供してキャンペーンを始めています。
この世界の流れを受けて、じきに?もう既に?日本でも
「家庭での体罰はしつけではなく虐待です。子どもを傷つける言葉かけは心理的虐待です」
と共通認識が図られるでしょう。
ただそう言われると、
「子どもが分かってくれない、何度言っても聞かない!なのに大声も虐待、叩くのも法律違反、だったらどうしたらいいの?放っておけばいいの?」
と言いたくなりませんか。
日頃からお母さんと子どもに寄り添い育児支援をしている
一般社団法人マザー・ウイング代表理事で
ポジティブ・ディシプリン ファシリテーター資格も持つ
小川ゆみさんが、シンポジウムの最後のほうに質問しました。
「今子育てを一生懸命されているお母さんの中から、孤独で孤立してどうしても手が出てしまうとお話しを伺います。ともすれば、禁止でお母さんを追い詰めてしまうよう思います。
養育者がポジティブな子育ての方法を学べる"ペアレントトレーニング"が
体罰禁止の法定化とともに進められるべきだと思いますが、いかがでしょうか。」
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの瀬角さんがお答えになりました。
「法律で明文化すればそれで終わりではないです。じゃあどうすれば、いいか。
セーブ・ザ・チルドレンはグローバルに『ポジティブ・ディシプリン』という体罰をしないで子育てをするプログラムを提供しています。体罰禁止を法定化すること、みんなで体罰いけないねってそう思うこと、体罰を使わない子育ての事例紹介のようなプログラムの提供、この3つが必要だと考えています」
子どもへの暴力を終わらせる世界の流れは、私たちの日常の子育てに合流します。
シンポジウムで医療分野からのスピーカー ルーカス氏がお話されました。
「(車の運転は命に関わるスキルなので)
免許証をとるのにどれだけ時間をかけてどれだけ勉強してどれだけお金がかかるか。
同じように、子どもを育てるのも、時間をかけ、学び、お金をかける(社会が支援する)必要があります」
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子どもへの暴力は成長のリスクを高めるという発見に加えて、
成長に良い環境や要因も研究で明らかにされてきています。
それを日常の子育てで使えるようにと開発された
〜体罰を使わない子育て〜『ポジティブ・ディシプリン』は国境を越え、専門領域も越え、今日本にあります。
書籍、講座、弊団体のfacebookページで情報をお届けしますので、
ぜひ車の運転のように、何度も試して、慣れて、ポジティブ子育てを生活の一部としてもらえればと嬉しいです。