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執筆者の写真ポジティブ・ディシプリン コミュニティ

虐待もう見たくない。一緒に始めよう


まずは、栗原心愛さんの報道に接し、心からお悔やみを申し上げます。

#虐待 は、死というこれ以上ない痛ましく哀しい結果を招くばかりじゃなく

心身の成長を阻んだり傷つけたり、歪ませる危険因子であることが、調査や研究によって明らかにされています。日本では、虐待は年々増加していると言われ、いまや社会問題です。

虐待の実態として参照されるのは、厚生労働省が報告する虐待の「相談対応件数」で、その件数は、虐待の対象範囲が拡大したこと、虐待の通告義務が課されたこともあって、近年増加の一途です。

学者さんによっては、「相談対応件数」は「虐待件数」ではないし、実際の虐待が増加し深刻化しているかは不明と述べる方もいらっしゃいます(田中,2011)。ちなみに発表されている虐待死件数は、相談対応件数のようには増加していません。

虐待の背景には、違うレベルの多くの要因が複雑に相互作用していると、言われています。例えば次の4つの要因から相互作用を説明しています(アレキサンダーら,2011)。

第1レベル・・・しつけに体罰を使うなど親が持つ信念や子どもの気質などの個人要因

第2レベル・・・パートナーや拡大家族の支援がないなど人間関係が持つ関係性要因

第3レベル・・・暴力が容認されている(「叩かなきゃいけない時もあるよね」など話されている)など、地域環境が持つ地域要因

第4レベル・・・性役割(男は仕事、女は家庭など)を厳格に求める・暴力を促進する(例:熱血教師が生徒を叩くのが美化されたドラマ)などの社会文化的規範の社会要因

実際どうなのか、日本の研究や調査、虐待死亡事例の検証を見てみましょう。

虐待死には、母親の心身状態(個人要因)、配偶者の協力がない(関係性要因)、養育能力の低さ(個人要因)などに相関がありますし、#体罰 については6割が容認(地域要因)している状況です(2018)。

ある調査では、暴力・暴言をする母親で「夫と気持ちが通じない(関係性要因)」と答える方が、偶然と言えないほど多いです。加えて、注目したいのは、3歳の子へ暴力・暴言をする母親の4割強が、#しつけ としてやりながらも、実はその9割弱が自分の暴力に悩んでいることです(井上ら,2005)。

母子のサポートを長くされている精神科医の渡辺久子さん(2008)は

「乳児のむきだしの感情が、母親自身の未解決の葛藤を誘発しやすい」と虐待することにより、更に親自身が深く傷ついていると述べています。

虐待への対応として政府は、以下のように増えてきています。

例えば、市町村で育児相談がしやすいように相談体制の強化、子育て支援事業の法定化し予算をつける、虐待と思ったら周囲が通告することを義務化、被虐待児の一時保護や保護施設への入所する役所の権限強化、被虐待児の自立支援のために家庭支援相談員を配置、里親委託の推進など。

このような対応を歓迎する一方、心配する声もあります。例えば、ある学者は、家族のニーズに寄り添う支援から、全ての家族を調査対象とし虐待リスクの高い親を監視・管理・介入する権限を持つ支援体制への転換を迫るものではないかと指摘しています(所,2014)。

『#子どもの権利 条約』の前文では、

子どもは「家庭環境の下で幸福、愛情および理解ある雰囲気の中で成長すべき」と宣言し、

ついで18条で親が子を養育するために国がサポートする旨を定めています。

これは、子どもの命や成長を守るために親を管理するという意味ではないです。虐待する親自身が悩み、傷ついている状況からも、虐待が起きない環境づくりが重要ではないでしょうか。

例えば、虐待リスクを弱めると言われている「父親の関与」を確保するために、経済界を巻き込むライフワークバランスの変革は必須だと思います。#スウェーデン の父親専用育児休暇制度は参考に値するので、ぜひ知って欲しいです。

家庭での体罰を禁止する法制化も必要でしょう。体罰禁止の法制化について、アンケートでは、賛成(46%)が反対(32%)を上回りました(2019.2.18朝日新聞)。今のように政治家が法制化を渋るようであれば、「虐待死をなくすために、何も法律で子どもへの暴力を禁止することはない」と考える方も出るでしょう。でもそれは、先ほど述べたように、環境要因・社会要因として虐待に影響を与えていると考えたほうがいいでしょう。

少子化・核家族化により、共に暮らす親族から育児を学ぶことができない現代社会では、育児も当然学べるようペアレントトレーニングの提供も有効です(Joan、2012)。『#ポジティブ・ディシプリン』は、非暴力の前向きなしつけに必要な情報や演習で構成された養育者支援プログラムです。

#子どもの権利 条約で述べられている「愛情および理解ある雰囲気の中で成長すべき」なのは親も同じなのです。

育児支援の専門職の方は、調査や研究の成果により虐待リスクの高い親を見つけやすくなるでしょう。でも、養育者を監視し管理・介入するのではなく、見守り寄り添い理解し成長を共に喜び合うあり方が重要だと私たちは考えます。

『ポジティブ・ディシプリン』では、18時間、私たちは養育者の方と一緒の時間を過ごします。


それは、養育者が自ら考え、

自分が心から望み、自分も子どもも幸せになる子育てに確信と自信を持ち

自分の子育てを自己決定できるために必要な時間です。

そして、講座修了後も

参加者の方が、悩みながらも20年近く子育てをするのに

私たちは変わることなく

励まし、期待し、一緒に喜ぶ仲間として、ここで発信を続けたいと思っています。


引用・参考:

厚生労働相 「平成28年度 福祉行政報告例 児童福祉」(参照日2018-5-28)  

田中理絵(2011)「社会問題としての児童虐待-子ども家族への監視・管理の強化-」

社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会(2017)  「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第13次報告)」

アレキサンダー・ブッチャー、アリソン・フィネイ・ハーベイ、マーセリーナ・ミアン、ティルマン・フュルニス(2011)『エビデンスに基づく子ども虐待の発生予防と帽子介入―その実践とさらなるエビデンスの創出に向けて』(編者)トニー・ケーン 明石書店

中釜洋子・布柴靖枝・無藤清子・野末武義(2008)『家族心理学―家族システムの発達と臨床的援助』有斐閣ブックス 

セーブ・ザ・チルドレン(2008)「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」

井上ひとみ・林千寿子・西村真実子・高窪美智子・田屋明子・津田朗子・関秀俊 「育児における暴力・暴言の実態と背景要因の関係」 『石川看護雑誌』3巻1号

渡辺久子(2008)『子育て支援と世代間伝達 母子相互作用と心のケア』 金剛出版

所貞之(2014)「児童虐待問題にみる児童福祉施策の変容と展望」 城西国際大学紀要

竹崎 孜(2002) 『スウェーデンはなぜ少子国家にならなかったのか』 あけび書房

https://www26.atwiki.jp/childrights/pages/30.html(参照日2018-5-28)

Joan Durrant、 PhD and Ron Ensom(2012)「Physical punishment of children: lessons from 20 years of research」

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